ねずみ図書館

本を読んで、その内容を書き留めるためにブログを作りました。紹介させていただく本に興味を持っていただけると、とてもうれしいです。

しゃべれども しゃべれども

思うように腕が上がらず、壁にぶち当たって悩む二つ目の落語家・今昔亭三つ葉

 

そんな彼がひょんなことから、「喋り方教室」を開く事になります。喋り方教室と言っても、何を教えて良いか分からない主人公はとりあえず、落語でも教えるかと生徒に落語を教える事にします。

 

そんな彼の教室には4人の生徒が通い始めます。

吃音の従弟のテニスコーチの綾丸良。

無愛想で口下手な美女・十河五月。

大阪から引っ越してきたものの、勝ち気なためにクラスに馴染めない小学生・村林優

毒舌でいかつい面相の元野球選手・湯河原太一。

 

一見、共通点の無い4人ですが、皆それぞれが自分の喋り方にコンプレックスを感じています。それを喋りのプロである主人公が落語を教える事で、自信を回復させようとするストーリー。

 

この小説のテーマは「自信」だと思います。主人公である今昔亭三つ葉は今まで当たり前にできていた落語が突然上手くできなくなり、それをきっかけにスランプを経験します。

 

スランプとは何かと考えた時に、今まで条件反射的にやっていた事が何故かできなくなるという事を指すのでは無いかと思います。

 

スポーツ、仕事、人間関係、色んな事にスランプや不調はありますが、今まで当たり前にできていた事が不思議な程に上手くいかなくなる時があります。

 

スランプを脱する方法を明確に持っている程、人生経験は豊富で無いけど、次の段階は今まで自然とやっていた事を意識的に体を動かすという事になるとになると思います。

 

自然では無いものの、意識的に体を動かしどうすれば好調だった時の体の動かし方に近づける事ができるかという事をやっている様に思います。

 

それでもう一度、思い描く姿になれるのか、また違う姿形になるのかはそれぞれだと思いますが、このスランプを経験する前と後では、圧倒的にアウトプットしやすいというメリットがあると思います。

 

感覚でやっていた事を、意識的に動かす訳なので、どうすべきかを考える時間が圧倒的に増えると思います。

私は陸上をやっていました、大した選手にもなれなかったけど、長いスランプのおかげで子供にどうすれば長く走れるかを教える事ができるのは、スランプのお陰だったと思っています。

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休職中の刑事、本間俊介を通して、関根彰子が婚約者の前からいなくなった理由を、足跡を遡りながら紐解いていくという小説です。

 

現代社会人の多くは、「良い暮らし」を求める事で仕事を続けることができ、手に入れるこで幸せを感じます。

 

関根彰子はそんな憧れを求めて、そして被害にあった一人です。これはバブル以降の日本を描いた作品ですが、今読んでも実に面白い。

スマホ決済、リボ払い、簡単に借りられるカードローン等、現代は手段を選ばなければ簡単にその「良い暮らし」を買い求める事ができます。

 

 

関根彰子は僅かなカード払いから借金地獄に、そしていよいよ最後は同じく借金に苦しむ同条件の女性に殺されてしまいます。

殺した側も借金から逃れる為に、違う名前が欲しかったのでしょう・・・

 

 

これは昔のお話ではありません。現在進行中の話です。

私は金融関係で働いていますが、住宅ローンの可決率は異常です。

 

 

頭金0でローンが通る時代、そして年収の7~8倍のお金を借りられる時代、主人と妻が連帯保証までして家を買わないといけない時代。

はっきり言って異常です。

 

 

住宅ローンの時には借入状況を確認しますが、住宅ローン以外の借入も非常に多い様に思います。

みんな当たり前に良い暮らしをしている様に、見えるけどそれはファイナンスで支えられているからです。だからみんな家を買っているし、良い車に乗っているから自分も買わないといけないと思う必要は全くないと思います。

 

 

最近の若い方は、物を所有しないようですね。車も家もいらない。

おそらくエリートサラリーマンには「何が楽しくて生きてるの?」と言われてしまいそうですが、寧ろそれは正常である様に思います。

 

 

本当に必要な物だけあって、それを大切にできれば良い。

自分が大切だと思うえるものを、ずっと大切にできる生き方の方が素敵だと思います。

日日是好日~お茶が教えてくれた15の幸せ


 

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この本(エッセイ)は数年前、映画化されて有名になりましたね。樹木希林さんの遺作としても知られています。

 

しかし読めば読む程、作中に出てくる先生のイメージが、樹木希林さんのイメージにピッタリで、少しホンワカしてしまいます。

 

 

お茶、お花、武道等、日本的なものは決まり事が多いですよね。最近の考え方からすると堅苦しく窮屈なイメージがあるかもしれません。

でもこの本を読むとそのイメージは少し変わるかもしれません、日本的な文化が大切にしている事は「段階的に気付いていく事」なんだろうと感じます。

 

 

少し禅宗っぽい話になりそうなので、すごく嚙み砕いてSTAR WARSっぽく言うと

「Don't think   feel  」です。

茶道は言葉で伝えるのでは無く、体感の中で「段階的な気付き」に重点を置いていると言えそうです。

 

 

私たちは日々の生活の中で、知っている事は山程ありますが、分かっている事・理解している事は意外と少ないのでは・・・と思う事があります。

 

 

つまり体感で感じるものです。

 

 

例えば人の別れの寂しさも、寂しいだろうという事を知っていても、本当にその痛みや冷たさを感じるのは、やはり体感を伴うものですし、体感を重ねる事で、あぁこういう意味だったのか。と理解する事も多いと思います。

 

 

私は昔から理解できていない事が、コップから水が溢れるみたいに理解できた瞬間をとても素敵な瞬間だと思っています。

私の大好きな「千と千尋の神隠し」の作中にこんなセリフがあります。

 

 

「大切な事は忘れないものさ、思い出せないだけで。」

 

 

普段はすっかり忘れているのに、色んな経験をして、ある日その事が突然理解できた瞬間まで忘れていたのに、あぁこの事だったのかと思い出す事があります。

 

 

そんな小さな変化は退屈なものですが、茶道の様な「段階的な気づき」を大切にする生き方は素敵だなぁと思います。

f植物園の巣穴

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~埋もれた記憶を掘り起こす長編小説。~

 

月下香の匂ひ漂ふ一夜。植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界でした。

 

前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、主人公ははゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

 

 

明治・大正時代の時代設定で、夏目漱石の文体を思わせる小説です。

 

 

巣穴に落ちていく設定は、自分は何なんだろうと想像した時に、段々と自分の中に落ちていく雰囲気に似ています。

そこで主人公は過去の自分、更に言えば過去のトラウマと向き合う事になります。

 

 

私の中にも穴とも巣穴とも言えない穴があって、その中にはあまり良い物は住んでいないように思います。

 

 

でもそもそもが自分と向き合うとはそういう事なのかもしれません。そこに神聖なものが住んでいて欲しいけど、実際はネズミの様な小さな生き物かもしれない。それを知る事が自分と知ろうとする事なのかもしれません。

82年生まれ、キム・ジヨン~今と昔の偏見が変わってきている

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現在、日本では少子高齢化が進んでいますが、その日本よりも出生率が低いOECD加盟国があるのをご存じでしょうか??

 

それは隣国の韓国です。

 

世界的にも韓国の合計特殊出生率は最も低いグループに属し。2019年基準で、経済協力開発機構OECD)加盟国38カ国のうち、韓国が唯一の0台の合計特殊出生率を記録しています。出産経験のある女性の第1子の出産年齢も、韓国は32.2歳(2019年基準)で加盟国の中で最も高い水準にあります。

 

さて要因はなんでしょう。受験競争が激しい事で知られる韓国は、きっと教育費用が高騰していて、だから出生率が低くなるに違いないと思っていましたが、この本を読むと少し考えが変わります。

 

 

主人公であるキム・ジヨンは女性としての生き辛さ感じながらも、必死に勉強して入った大学から就職への壁にぶち当たります。

 

 

結婚・出産で会社を辞め、社会から切り離されていくような気持ちを抱える日々、そして再就職への困難な道――。女性なら誰もが感じたことがあるであろう場面を積み重ね、ジヨンの人生は描かれています。

 

 

あとがきに書かれていた言葉を少し紹介しましょう。

今も日本・韓国にも悲しい事ですが、やはり性への偏見は残っています。しかし、偏見の理由が少し変わってきているのでは無いかという内容です。

 

 

昔は優劣で語られる事が多かった性別への偏見ですが、現在は「特別扱いを受けている」という、疑念が性差別へ向かわせているのではないかという分析がありました。

 

 

韓国では、男性は若く遊びたい盛りに徴兵があります。「何故、俺らだけ?」という気持ちが根幹にあるのでは無いかという分析は面白いなぁと思いました。

トランプ大統領もそうですが、「なんで移民は特別で、俺らはこんな生活をしてるんだ!!」という感情は誰もが持つ可能性があるし、扇動しやすい部分かもしれません。

 

 

この「劣っている」という考えかたでは無く、「特別扱いを受けている」という自分を卑下するような話を太宰修が100年以上前に書いているのをご存じですか??

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筑摩書房ヴィヨンの妻」の中に「男女同権」という作品があります。

この物語では、幼いときには母にいじめられ、大きくなっては知り合った女性にことごとくだまされ、そして虐げられ続けた老詩人が、男女同権になって初めて女性と同じ権利を得たと凱歌を挙げます、太宰治が時事問題をテーマにした希な作品です。



「民主主義のおかげで、男女同権! これ、これが、私の最も関心を有し、かつ久しく待ち望んでいたところのものでございまして、もうこれからは私も誰はばかるところなく、男性の権利を女性に対して主張する事が出来るのかと思えば、まことに夜の明けたる如き心地が致しまして、おのずから微笑のわき出るのを禁じ得ないのでございます。(男女同権)」

 

 

今日はこれにて~

 

ICO-霧の城~正しいってなんなのか9.11に思う事

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この本は著者である宮部みゆきさんが、ICOというゲームソフトに影響を受け、そのストーリーやビジュアルに感銘を受けて小説にした結構珍しい作品です。

 

宮部みゆきさん特有の比喩や文章表現を楽しむというよりは、ストーリー展開を楽しみたいという方におススメの本でしょう。

ハリーポッターとか指輪物語が好きな方にはいいかもしれません。

 

ストーリーは主人公であるイコは村の掟によって、生贄にされてしまいます。

生贄は本の名前にもなっている、霧の城に献上されて、その城の主である魔女に差し出されます。

 

霧の城で生贄にされたイコでしたが、友達が持たせてくれた不思議な魔法によって、生き残ってしまいます。

霧の城に残されたイコは魔女の娘ヨルダと出会う事に、そのヨルダと魔女を倒し、生贄の無い平和な世界にするというのが基本的なストーリーです。

 

 

ヨルダは自分の母であり、絶対的な魔女である母を倒し平和な世界を取り戻したい一方で、肉親である母への愛に苦悩します。

 

 

生贄であるイコも実は生贄は魔女が欲していたものでは無く、村の人間が魔女を恐れるあまり魔女をその城に封じ込める目的で、生贄を献上していた事を知ります。

 

 

この二人は苦悩しながらも、悪では無く矛盾に立ち向かいます。

 

 

ここで感じるのは、絶対的な悪や善があるのかという事です。アフガン戦争もそうですが、一方から見れば民主的な政治が善で、古い慣習が悪であるという単純な二極対立で議論されていますが、現実は単純な二極対立がある訳では無く、そこに矛盾があるだけなんじゃないかという気がします。

 

 

そしてその矛盾は白や黒といった色で、きっちり分けられるものでは無く、色が分かりにくいものなのかもしれません。

 

 

まるで霧のように。。。

 

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英雄の書 下巻~メンタリストの炎上に思う事②

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英雄の書は上巻の紹介の通り、主人公であるユーリが同級生を殺してしまった兄を救済する物語です。

 

兄は「英雄の書」から受けた影響・魔術によって、その力を制御できなくなり、兄は同級生を殺してしまいます。

 

動機は何か「いじめ」です。

 

同級生がイジメられているところを見た兄は、それを助けますが、今度はその兄がイジメられる事に…。彼は力を求めます、今を変えられる大きな力。そこで出会ったのが「英雄の書」です。

 

少し世界観を説明すると、英雄の書は古書であり、魔術書です。

英雄の書を通じて英雄の力に憧れ、力を得た兄は同級生を殺します。そして兄はその古書の世界に幽閉される事になります。

 

私はどうしてもメンタリストさんの事を考えてしまう。

中学生の時にイジメられていたメンタリストさんは、やはり(英雄)大きな力に憧れた一人だと思います。決して健全とは言えない学生時代を送り、成功という力を入れたメンタリストさんは、今度は英雄の暗黒面を示しました。

 

 

成功したからと言って、力を得たからと言って、優性思想やホームレスを侮蔑して良い訳では無いし、おそらく自分の得た強大の力の使い方が分からず、恐れている様に見えて仕方ないのです。

 

 

本当に彼が力を行使したい相手は、この物語の兄と同じく同級生(自分を認めない人)なのでは無いか・・・

そんな風に感じてしまいます。

 

 

この小説の中で人の命について述べたところがあるので紹介します。

「人の命は地球より重いと言いますな?」

「一人の子供が、己の意思で一人の子供の命を奪う事を憚らぬ世界は、千人が千人を万人が万人を奪う世界と何ら変わりがありませぬ。」

 

 

ガツンと殴られた様な気がしました。

一人の命が大切にできないのに、たくさんの人の命を大切にできる世界になる訳がない。

 

 

だから、強者は弱者に優しくするんですよね?

巡ってそれは、自分を大切にできる世界になると言う事だから。。。

 

 

物語の最後に、兄は罰を受けます。

現実世界では無く、物語の世界で、永遠の時間の中で、世界中で生まれる物語を

管理する労役につきます。

 

 

次に生まれてくるその日まで。