禅とジブリ~お前にサンが救えるか?!
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この禅とジブリは、本書の名前どおり、禅についてジブリのプロデューサーである鈴木敏夫氏と禅僧との対談の本である。
禅についての経典だと、なかなか読みにくい部分があるが、対談方式で、ジブリの作品の中で禅や東洋思想について、影響を受けた部分を示してくれているので、禅そのものは理解できなくても、禅のアウトラインがおぼろげながら見えてくる、禅の雰囲気を感じられると言っても良いかもしれない。
もののけ姫の中で、山犬のモロは主人公であるアシタカに問う。
「お前にサンが救えるか?」
ここで想像して欲しい、あなたが物語の主人公だとして、はたまた彼女の親に結婚したいと告げ、本当に幸せにできるのかと聞かれているところを思い浮かべて欲しい。
おそらく一般的は正答は「はい」だと思う。しかしながらアシタカは「分からない」と答える。
かつて達磨大師という禅僧は、当時中国の皇帝に呼ばれて「お前は何者か」と聞かれ、「何者でも無い」と答える。
アシタカの「分からない」はそれに通じるものがあるのでは無いだろうか、「分からない、だが共に生きることはできる」という事が未来の事なんて実は何も分からない世界において本当の答えなのかもしれない。
さてこれ以上、禅を語るとボロがでてしまうので、これくらいにしたいと思う。
本書や禅の教えで大切としている事の一つに「而今(にこん)」という言葉がある。これは過去を憂えず、未来を恐れず、今日を今この瞬間を大切にするという考え方である。考えてみれば、明日生きている保証も無い訳で、昨日はもう戻らない訳で、だから今しか無いのだから、今を大切に生きようという事を伝えようとしている。
今、宮崎監督が制作している映画は「今をどう生きるか」である。この映画は我々にどんな事を教えてくれるだろうか。